「ときどき思うんですけど」



いや、ときどきじゃないかもしれない。しょっちゅうかもしれない。 そうやって悩んで、なかなかその先を話さない私を侘助さんはちらりと見る。 けどそこでタイミングよく信号が青になったので「侘助さん、前」と言ったら 彼はまた視線を前に向けて車を発進させる。 しばらくしたあとに、侘助さんが聞く。



「で?ときどき何を思うって?」
「いや、どうして私と付き合ってくれてるのかなって」



私は今年で二十二歳になる。いや、侘助さんからしたらまだ二十二歳なんだろうな。 歳の差ちょうど二十。そこらへんの人に言うときっと驚かれるだろうな。 (一番最初に友人に言ったときも驚かれた) けれど私は何とも思っちゃいない。だって恋愛に歳なんて関係ないでしょうが。 この間テレビで「三十歳差結婚」って有名人が結婚したのを取り上げていた。 それよりは全然マシでしょうが。



「俺じゃ不満か?」
「違います!てかそんなこと言ってるんじゃないですー!」



「俺じゃ不満か?」そんな滅相もございません。 むしろ私で不満じゃないのだろうか。私に侘助さんはもったいない気がする。 だって私は二十二歳で。まだ大人の世界に入ったばかりで、銀座で歩いているような あんなセクシーさもないし(正直侘助さんにはセクシーな人がお似合いだと思っている)



は十分セクシーだろ、ほら、昨日だって」
「うああああ!やめて!!」



昨日のことを思い出して顔が火照る。そんな私を見て侘助さんはニッと子供みたいに意地悪く笑った。



「…私で大丈夫ですか」
「当たり前だろ」
「子供っぽいのに?」
「そういうのも可愛いからいいんだよ。それに言っただろ、昨日みたいな」
「わかった、それ以上言わないで」



私は窓の外を見る。まわりは山だらけだ。もうそろそろ着くのだろうか。 ますます不安になってきた。今から侘助さんの実家とやらに行くのだ。 親戚が毎年集まるらしいその行いに私も彼女、ということで参加させてもらう。 だけど親戚は初対面なわけで、きっと私を見てびっくりするんだろうなって思って心配なのだ。 (もし「侘助がこんな小娘と!」って言われたらどうしよう)



、」



信号が赤になって車が停まったとき、侘助さんが私の名前を呼ぶ。 だけど私は振り向かないでいると、肩をぐいっと引き寄せられた。



「ふぁっ…わ、びっ」



名前を呼ぼうとしてもその時間を与えない。深く深く腰が抜けそうなくらいに 侘助さんはキスをしてくる。ここどこだと思ってんの。車の中。外からは普通に車の中が見えるのに。 やっと止めてくれたかと思うと私の唇をぺろりと舐めて言う。



「俺はこんなえろい顔するが好きだけどな」



そう言ってから車を発進させた。 恥ずかしくて「侘助さんの馬鹿…」って顔を隠していると頭をわしゃわしゃと撫でられた。 「俺が選んだ女だ。自信持って行っていいんだよ」まるで私が今まで 悩んでいたことをわかっていたように侘助さんは言う。 もう、本当にこの人にはかなわないなあ。小さく「私も好き」っていうと どうやら侘助さんには聞こえてたらしく「もう一回キスしていいか?」って笑った。







歳の差