シリウスは寮関係なく女子生徒に人気だ。バレンタインはすごい量のチョコレート。 クリスマス前にはたくさんの人がダンスに誘おうとしていた。 毎日のように彼は告白されていた。そしてそれを「断る理由がないから」だとか「暇つぶしに」 だとか言って告白を受けるのだ。 別に私は何も思わない。だってわかっているから。彼はすぐ彼女を振る、ということを。 そして振られた彼女は二度とシリウスと話すことができない(シリウスが嫌がるのだ)
私はきっと今女子生徒の中で一番シリウスの安全位置にいると思う。 告白もしない。特別な感情もない。世間一般で言うと「友達以上恋人未満」というやつだろうか。 私はひどくそれを気に入っている。安全なのだ、すごく。だからシリウスと話すことができない、 なんていうことはないと思っていた。



「俺、グリフィンドールの子と付き合うことになった」



お菓子を食べながらシリウスが言う。これはいつものこと。 「またー?今回は長く続くといいね」と冗談まじりに言うとシリウスは笑った。 グリフィンドールの子は同い年の子だった。すごく可愛い。 でも結局今回も長く続かないだろうと思っていた。ううん、きっと続かない(自信があった) だけどその子とは長く続いた。クリスマスもその子と一緒に踊って休暇のときには一緒に帰って バレンタインには私のチョコレートも受け取ってくれなかった。 お互いがグリフィンドールということもあって夜もずっと二人でいて、私はひどくつまらなかった。



「なんなんだ、あいつ」
「まあまあ、落ち着いて。彼女も悪気があったわけじゃなかったんだから」



一度、二人が大喧嘩をしたことがあった。他からみればすごくつまらない理由だった。 けれどシリウスはかなりのご立腹のようで、「別れ話」を切り出していた。 私に相談してくれていた。それがすごく嬉しくて。「落ち着きなよ」とか言っておきながら 実は別れろ、なんて思ってしまった(自分が醜い、ってわかってるけど思ってしまうのだ)



「彼女とどうなったの?」
「仲直りしたよ。今考えたらつまらない喧嘩だぜ。、相談のってくれてありがとな」



しかし、数日後にはまたいつも通りだった。お礼を言われた私は罪悪感が残る (だって、別れろなんて思ってしまっていたから) それからは何もなく、ずっと付き合ってついには卒業式の日がきてしまった。



「よう、



卒業式のあと、中庭のベンチに座って、ジェームズとシリウスが盛大な悪戯をしているのを見ていると こちらに気付いたシリウスが近付いてきた。「もう卒業だな」そういいながら私の隣に座る。



「あっという間ね」
「そうだなー。はこの後どうするんだっけ?」
「私はマグル界に戻って家を継ぐつもり。シリウスは____」
「俺は騎士団を作る」
「そっか」



そういえば前から言っていたな、騎士団を作るって。 そのときは「も入れ!」なんて言われてたっけ。シリウスは覚えているかな。 私今誘われたら、入るよ(ねえ、お願い)マグル界に戻ったらシリウスと会えなくなっちゃう。



「あいつも入れて、一緒に暮らそうと思ってるんだ」



シリウスの視線の先には、彼女。幸せそうな、笑顔(すごく綺麗だよ、シリウス。彼女のこと大好きなんだね)



といて楽しかった。ありがとな」



手を差し出される。そして握手をした(離したくない、離したらシリウスはきっと彼女のところに__) ぎゅ、と力を入れてみるけど、シリウスは簡単に手を離した。 それから「また会えるといいな」とそう告げてから彼は彼女の元へ走っていった。

会えるわけないよ。私はマグル界に戻るんだから。 もう彼には彼女しかいない。私はいない。 シリウスが彼女と幸せそうに笑っているのを見て、胸がぎゅう、と痛んだ。 "友達以上恋人未満"だなんて馬鹿らしい。いつも一緒にいてわからなかったのだ。 安心していたのだ。それがいけなかった。
たぶん、いやもうこれは確実だ。 これは恋だ。
私はシリウスのことが好きだった。


そうして今更気付いてしまうのか。とても自分は醜いと思った。 悔しい。視界がぼやける。私は拳を握り締めた。




ばいばい、シリウス








恋だった