夢を見た。サソリが死ぬ夢だ。それを傍で私が見ていた。 けれど所詮夢。起きて部屋を出るとサソリが「起きるのおせぇ」とか言ったからほっと、安心する。 そしていつものように彼はデイダラと任務へと出掛けて夜帰ってくる。それに私は「おかえり」って言うと サソリは少し意地悪く笑う。

そして今日もまた夢を見る。またサソリが死ぬ夢だ。 次は見ていただけじゃない。名前を呼ぼうとした。けれど声が出なくて叫んでも叫んでも声は出なかった。 でもまたそれは所詮夢。朝起きたらまたサソリが「今日もおせぇ」って言った。安心する。 いつもなら私が起きてすぐに彼は任務へと出掛けていくのだけれど今日は違った。 ご飯を食べているとそれをソファからじっと見てくるのだ。 見られてると食べにくいんだけど何か用?って聞くと彼は「別に」と答える。 なのにまだ私をじっと見る。



「そろそろ任務なんじゃない?」
「明日から重要任務らしいからな。今日は休みだ」
「ふーん。明日の任務私も参加しようかな」
「迷惑」
「ひどい。私だって強いのよ」



この前だって、と言うけれどサソリはふっと鼻で笑って話をそらした。 それから彼は本を取り出して読み始めた(珍しいなあ) 私は食器を洗ってからコーヒーカップを1つ持ってサソリの隣に座った。



「コーヒー飲む?」
「いらねえ」
「言うと思った」



コーヒーを飲みながら外を見る私と、本を読んでいるサソリ。 誰もいないアジト。なんか、久しぶりだなあ、なんて思いながらコーヒーを一口飲む。 サソリはいつも出掛けるのは早いし帰ってくるのも遅いからなかなかこうやって2人で のんびりすることがないのだ。だからこの時間が幸せだなあ、なんて思う。



「そういえばさ」
「なんだ?」
「最近同じ夢見るの」
「夢?」
「サソリが死ぬ夢」



ぽつり、と言うと彼は本を閉じて私を見た。



「俺が死ぬわけねえだろ」
「夢に出てくるんだから仕方あるまい」
「出ないよう努力しろ」
「無理。私だって見たくて見てるわけじゃないもん」



彼はまた本を読み始める。私は空になったコーヒーカップの底を見つめる。 そうだよ。サソリが夢に出てきてくれるのは嬉しいけど、それが死ぬ夢なんて見たくない。 もしかしたらこれは予知夢かもしれないし、そうじゃないかもしれない。 でも暁は死と隣あわせだ。いつ死んでもおかしくないんだ、ってこの前イタチに言われた。 そんなことをぐるぐる考えてると涙が出そうになる。S級犯罪者の集まりだって仲間なのだ。 仲間が死ぬ、なんて誰だって悲しいに決まってる。



、めそめそすんな」



一粒涙が落ちたときにサソリにデコをたたかれた。 痛い何すんのよ!って顔を上げるとサソリと目が合った。



「もう一度言うか?俺は死なねえ」
「まあ、生身じゃないし…でもやっぱり、」
「つべこべ言うな、所詮夢だ。どんだけテメェは信じてるんだ?くだらねえ」
「ご、ごめん」



サソリはため息をついた。



は俺の帰りを信じて待ってろ」



そう言うと彼はまた本を読み始める。 「絶対帰ってきてね!できれば無傷が嬉しいんだけど!絶対だよ!帰ってきてね!」 って必死で言うとサソリは意地悪く笑う。



「あと、おかえりって言ったときに「ただいま」って言ってくれると嬉しいな!」
「気が向いたらな」



じゃあ、明日帰ってきたら「ただいま」って言ってね! サソリに近寄って言ったら「うるせえ」って怒られた。










悪夢