の家の卵焼きって甘くておいしいよね」



ひょいっと私の卵焼きを弁当からとって友達が食べてしまった。 私もお返しで友達の弁当から卵焼きをとって食べてみたけど、 自分の卵焼きと全然味が違った。甘くない。



「今までこれが普通なんだ、って思ってた」



友達に言われて気付いたのだ。卵焼きは普通、砂糖を入れないんだってこと。 私の家は、当たり前かのように砂糖を入れてちょっと甘くする。 でも私はもっと甘いのが好きで、最近は砂糖を少し多めに入れて作っている。 私の卵焼きを一つ食べて友達は「甘っ!」と叫んだ。 だったら私も言わせてもらうけど、この卵焼き味薄い!



「ひどい。まあ、これ食べたあと自分の食べると確かにこれ薄いわ」
「砂糖入れたほうが絶対おいしいって」
「お菓子みたいじゃん」
「おかずだし」
「え?なになに〜、ちんの卵焼きお菓子みたいに甘いの〜?」



半分まで食べた卵焼きを口に入れようとしたとき、ぐっと誰かに腕を押さえられた。 上から声がして、見てみれば片手にポテチの袋を持っている紫原くんだ。 『お菓子』と『甘い』につられて来たんだと思う。 でも、卵焼きはあげないよって言ってから食べようとすると、 にゅっと顔の横から紫原くんの顔が出てきて、大きな口が私の持っていた卵焼きをぱくりと食べた。 「あー!」っと叫んでも遅くて。紫原くんはもぐもぐと卵焼きを食べている。 それからこっちを向いて「うま〜」とにっこり笑われた(可愛い…なんか許しちゃう)



「俺、ちんの卵焼き好き」
「あ、ありがとう」



もうないの?って私のお弁当をのぞいてくる。 もうないよって言うと「じゃあ、また明日?」って可愛い顔で聞いてくる。 そうだね、また明日、って軽く流して私は残っていたブロッコリーをとろうとして、ふと気付く。 あれ…?紫原くんの食べたのって、私の食いかけのだったよね?箸も使ったよね? 間接ちゅー?なんて思ってもう意識する歳じゃないのに、なんか顔が真っ赤になって恥ずかしくなる。 それに気付いた紫原くんは「ちん、かわいー」と茶化してくる。



ちんになら、間接ちゅーじゃなくて、ほんとのちゅーしてもいいよ?」



冗談で言ってると思うんだけど、私は意識してしまってまた赤くしていると、 紫原くんが私の頬にキスをした。もう、驚いた口をあっけらかんとしていると 「唇のほうがよかった?」って聞いてくる紫原くん。彼は小悪魔のようだった。







シュガー