私はみんなが好き。 船を直しているフランキー。いろんな武器を作っているウソップ。 薬を作っているチョッパー。調べものをしているロビン。 航海の指示をしたり、地図を広げているナミ。演奏しているブルック。 剣の手入れをしているゾロ。料理するゾロ。 特に作業している姿が好きなのだ。なんだか普段よりその姿のほうが魅力を感じる。 どれも、好きでいつも見てる。そうすると「また見てるの?」ってみんなから笑われる。 だって、好きなんだもん。

今日はゾロの手入れを見ている。ふかふかの芝生の上に寝転がって頬をついてじっと見る。 するとゾロがむ、とした顔で私を見た。



「今日は俺か」
「なに、嫌そうね」
「気が散る」
「ひど」
「他あたれ。ルフィなんか暇そうだぜ」
「ルフィ?」



ちらりと見ると、ルフィはサニー号の頭の上に乗って口笛を吹いていた(確かに暇そう) でも作業してないじゃん、って言うとゾロは「確かにな」って鼻で笑った。 ルフィは作業なんて滅多にしない。しいていうなら、食べるのが作業ってことかしら? 活躍するときは本当に大活躍なんだけどね。こうやって日常で作業なんてあの人はまったくしないから。

しばらくゾロの手入れを見ていると、今日は太陽も出てて暖かいし心地よくてうとうとしてきた。 それに気付いたナミが「寝るなら部屋いったら?」と声をかけてくれる。



「ナミー…連れてってー」
「甘えたこと言わないでよ。言うならゾロにして!」
「なんで俺なんだよ。、自分で行け自分で」



ほらほら、とゾロは私を払いのける。ひどい、いいもん。自分で行くし。 私はのろのろと立ち上がって部屋に行こうとする。けれど遠くで「ー!!!」と ルフィが私の名前を呼んだ(嫌な予感)私は、 ごめんルフィ今から寝るの、と告げようルフィがいるほうへと顔を向ける。 すると向こうから長い手がのびてきた。 うわ、と思ってももう遅い。その手は私を後ろから捕まえた。そして思い切りぐいん、と引っ張られる。 当たり前だけど着いた先はルフィの腕の中だった。目の前にはもちろん、青く広がっている海。 海にはたくさんのイルカ泳いでいて、空ではカモメが優雅に飛んでいる。天気が良くて海もきらきら輝いている。



「綺麗」



たぶん、ルフィはこれが見せたかったんだろう。感想を言うと 彼はにしし、と笑った。この光景をずっと見ているのもいい。 けれど、眠気にはどうしても勝てない。まぶたが落ちてくる。



「ルフィ、悪いけど私今すごく眠たいの」
「そうか!」
「そうか、じゃないの。私部屋で寝てくるから。戻して?」
「ここでいいだろ?」



ぎゅ、とさらに腕の力を強めたルフィはどうやら離す気がないらしい。 こうなったら、ルフィは言うことを聞かないってわかってるから「じゃあ、落とさないでね?」って 素直にそうすることにした。でも、私はこのルフィの腕の中で寝るのは嫌いじゃない。 むしろ大好きだ。



「ルフィは作業しないけど、こういうのが好き」
「ん?なにが?」
「なんでもなーい。こっちのはなし」



ルフィは作業しないけど、抱きしめてくれたり守ったりしてくれるから、大好き。 みんなよりちょっと特別。



「なにかわかんねえけど、俺ものこと好きだぞ?」
「うん。知ってる。ありがとう」



二人で笑う。でもやっぱり眠気には勝てなくて、それに気付いたルフィが言う。






おやすみ
(ルフィー!落としちゃだめよー!)(おー!わかってるー!)