部活が午前中に終わった。帰りにどこか行こうと誘ってきたのは黄瀬くんだった。 私と黄瀬くんと青峰と桃ちゃん。少し珍しいメンバーである。




「わたし幼馴染がいないからわかんないんだけどさ」




あれってアリなの?と前を歩く青峰と桃ちゃんを指差して言う。 桃ちゃんが青峰の腕に自分の腕をからめて歩いているのだ。時折、桃ちゃんが「あれ可愛い!」と 青峰の腕を引っ張ってる。 誰だって付き合っているんだな、と勘違いしてしまう。ところがどっこい、彼女等は"ただの幼馴染"らしい。 黄瀬くんはそれを見て笑った。




「俺もいないんでわかんないッス」
「あれ絶対胸当たってるよね?もうあんなことされたら男イチコロじゃん。それに桃ちゃん巨乳なんだから。 巨乳好きの青峰にはたまらないよね」
「確かに男にとっちゃたまらないけど。青峰っちッスよ?青峰っちと桃っちってほんとにたたの幼馴染って感じじゃないッスか?」




だからあんなことされても大丈夫じゃないッスか?と黄瀬くんは言う。いやいや、わかんないでしょ? あれでも内心ドッキドキで「おっぱいやべぇ」とか思ってたらどうすんの。黄瀬くんはそれを聞いて 吹き出した「そうだったらちょっとキモイッスね。青峰っちのイメージ崩れる」まあ確かに 青峰がそんなこと思ってたらちょっとキモイ(あ、桃ちゃんに対してってことね?)




「でも、いいなあ」




わたしもあんなことしたい。やってみたい。




「じゃあ、俺らもする?」




黄瀬くんが自分の腕を指差して言う。 くっそ、こんなときに笑顔で言われたらほいほいしちゃうじゃないか。 わたし桃ちゃんみたいに巨乳じゃないから、胸あたらないよ?と誤魔化して言うけど 黄瀬くんは「俺巨乳派じゃないし」とすかさず言ってくる。




「なにをさらっと。ほんとモテる男は軽いんだから」




ここで流される女の子は多いけど、わたしはそうじゃないよ。 そもそもおかしいでしょ。青峰と桃ちゃんならまだわかるけど、わたしと黄瀬くんって。 幼馴染ですらないのに。 この話終わりにしよう。ほらほら行くよー、とスルーしたら、腕を黄瀬くんにつかまれた。 は?と振り返るとぎゅ、と手を握られた(詳しくいうと、手を繋がれた) 「俺腕組むより手繋ぐほうが好きなんスよ」まぶしい笑顔で言われる。 不覚にきゅん、としてしまい誤魔化して「なに、してんの」と言うけれど 完全に動揺してしまっているのがバレている。




っち顔真っ赤」
「手、手!許可してない!」
「あの二人置いて、どっか違うとこ行きません?」
「話聞け!」
「てか最初からこれ狙ってたんスけどね!」




ニッと笑ったかと思うと黄瀬くんはわたしの話を聞かずに走り出した。 これで落ちない女の子なんて、いるのかな。







He kidnaped me!!