食満留三郎。部活はサッカー部。 どうしてそこまで緑に執着するのか、ってくらいに彼の持ち物は緑色ばかりだ。 例えばiPod。緑色なのにさらにカバーも緑色のシリコンカバー。 イヤホンもわざわざ緑色のを買っている。 ああ、あとリュックもださい。なんで牛柄なの?牛好きなの? もっとかっこいいリュックなかったの?(って本人に聞いたら「牛柄イカすだろ」だってさ)



「青とか黄色ならわかるよ?なんで緑だし!!」
「言われてみれば留三郎は緑ばっかだね」



ふふ、と笑って伊作は窓の外を見る。私も窓の外に視線をやると、そこには今話してた 食満留三郎が楽しそうにサッカーをしている(そりゃ、もうさわやかに) しかしTシャツの色が緑である(ていうか緑以外のTシャツ持ってるわけ?)



「でもさ、普通にしてたらイケメンだよね食満って」
「うん。あ、やっぱりもそう思うの?」
「当たり前よ。それに聞いて。あの人緑ばっかだからさ、私服も緑でださいかな、とか思ってたの」



先週、食満と遊んだときだった。食満の私服を見るのは初めてでいつも学校で着てるTシャツは緑だから 私服も緑系でくるのかな、って思っていた。だから「なに?どこまで緑好きなの」って 笑ってやろうと思っていたのに、待ち合わせ時間ぴったしに来た食満はすごくオシャレで 緑なんか1つもなかった。いや、むしろなんで学校でもそういうオシャレ感出さないし、みたいな?



「え?二人きりで遊んだの?」
「え?うん。あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ?え?何があったの?」



いや、正直私もびっくりした。金曜日に当番で放課後残っていたとき食満が私に 「日曜暇?」と聞いてきたのだ。もちろんそのときの私はまさか、誘われると思っていなかったので 素直に「めっちゃ暇」と答えたら「じゃ、駅前10時集合な」と勝手に言われたのだ。 当日は、普通だった。ボーリングしたり、ゲーセン行ったりご飯食べたり買い物したり。 うん。正直めっちゃ楽しかった。でも、どうして急に誘ってきたのかが未だに謎である。



「その日、留三郎の誕生日だよ」
「…え?ちょっと伊作さーん。ご冗談を」
「本当だよ」
「嘘!?だってあの日お昼とかも全部食満が奢ってくれたんだけど!」
「そりゃ、普通は男がお金払ったほうがかっこいいでしょ」
「まあ、確かに!優しい!とかかっこいい!とか思っちゃったけど!」
「どうだった?デート」
「ああ、うんすごく楽しくて…食満かっこよかっ…じゃなくてえええ!」
「俺がなんだ?」
「うおい!?」



いきなりぬっと私と伊作の間に食満が突っ込んできた。 サッカーをしたあとなので少し汗がにじんでいて、でも涼しい顔をしているのでとてもさわやかである。 (っていうか、いつの間に戻ってきたし) どうやら、今までの話は聞かれていなかったらしく安心する。「別に」と答えると食満は隣の席に座って 「ふーん」と興味なさそうに言う。



「ていうかさ、この前一緒に遊んだ日、食満の誕生日だったんだって?」
「ああ、そうだよ」
「ああ、そうだよ。じゃないでしょ?ケロッと言うなケロッと」
「別に言っても何もないだろ?」
「あるさ!ケーキぐらい…」



そうだ、そういえば友達がすごくおいしいケーキ屋があると言っていた気がする(それだ!)



「日曜暇?」



一瞬、食満はキョトンとした顔をする。けどそのあとニッと笑って「めっちゃ暇!」と答えた。 (この前と逆だ)



「仕方ないからケーキ奢ったげる!」



そう言ったら食満は笑顔で「おう!」と元気よく答えた。 やっぱり、食満はイケメンだ。ただ、Tシャツは緑色で真ん中にカエルがいてださいけど。







緑が似合う男
(僕いるのわかってる?)(伊作は来なくていい!)(ひどい!)(俺と千尋の約束だ!)