「臨也は人間を愛してる」



ぽつり、と呟くとパソコンに向かっていた臨也がこちらを向いた。急にどうしたのさ、彼は問うてくる。 別に、って答えると彼はデスクの上にあったコーヒーを持ってソファの少しのスペースに座った。 (大きなソファの半分以上はあたしが寝転がって占領しているから)



「人間を愛すことはすばらしいことだよ思うよ」



コーヒーを一口飲んで臨也は言う。だけどちっともすばらしいことだと思えないのは、 あたしが人間を嫌いだからだと思う(自分も人間だけれど) 幼い頃に親に捨てられ、タラいまわしで親戚の家を転々として、学校でも相手にされず、 どん底の生活を送ってきたのだ。みんなはあたしを「厄介者」と呼ぶのだ。



「人間はいやだよ」



誰からも愛されたことがないから、愛というすばらしさも知らない。 でも、臨也って愛されたことあるの?だって彼はあたしとはちょっと違う「厄介者」だし。 なんていうと彼は薄笑いを浮かべて「ひどいなあ、は」と言う。



「俺は愛されるんじゃなくて、愛すんだよ」
「それ一方的」
「いいじゃないか。俺はも愛しているよ!」



これも一方的というのかい?って聞いてきた。そ、そんなこと言われても。



「愛というものがなんなのかわからないけれど、」



臨也に愛してるって言われて嬉かったのは、どうしてかな? そう言ってから、この前テレビでやってたドラマで女の子が男の子のほっぺにキスしていたのを真似してみた。 すると臨也はきょとん、という顔をしてからアハハハ!と笑った。何が可笑しかったの、と 頬を膨らませて聞けば彼は「言ってることと、やってることがちょっと合わないよ、!」と言ってきた。



「俺はこっちの方が嬉しいよ、。今度からはこうしてよね」



臨也はほっぺではなくて、唇にキスをした。