「みーどーりたなーびくーなーみーもーりのー♪」



ヒバードが目の前を飛んで並盛の校歌を歌っていた。だけど、いつ聞いても「並盛の」の音が外れてる。 ヒバード、おいでって優しく手を差し伸べると可愛い声でわたしの名前を呼んでから手の中にすぽっと入った。



「いつも言ってるでしょ。音程違うって。な〜み〜も〜り〜の〜♪」
「なーみーもーりーのー」
「変わってないよー」



毎日教えるけれど、ちっともヒバードの音程は変わってない。名前やものはすぐ覚えるのに、 この子は音程だけは全然覚えてくれない。何度も挑戦してると、屋上のドアが開く音がした。その瞬間、 ヒバードが「ヒバリ!ヒバリ!」と名前を呼びながらわたしの手から飛び立った。(ああ、また雲雀さんだ)



「雲雀さんってタイミング悪いですよね」
「失礼だね。またヒバードに教えてたの?」
「まあ。でもちっとも覚えてくれないんですよね…」



わたしがヒバードと会うと、必ず少し遅れて雲雀さんとも会う。つまり、ヒバードと会えば、雲雀さんとも会えるってわけだ。 だけどちょっと悔しいのが、雲雀さんが来ると必すぐにわたしから離れて雲雀さんの頭の上にぽふっと乗っかってしまうこと。 その瞬間すっごく寂しいんだよね!



「でも、思ったんですけど」



最初にこの子に校歌教えたのって雲雀さんですよね?と言うと、雲雀さんは「否定はしない」と。



「だったら、雲雀さんが音程はずれてたからヒバードも同じ間違いをして覚えたんじゃ…!」



と言うと、トンファーがすっと目の前に振ってきた。(これは何回も経験していることなので)わたしはすぐに避けることができたけど、 まったくこの人は相手が女の子でも構わずトンファーを振り下ろすというのか!



「僕は音痴ではない」
「別に誰も音痴だなんては言ってないですよ!」
「それと同じようなことを言ったじゃないか」



…まあ、否定はしません。だって、雲雀さんが歌ってるところなんて見たことがないから「音痴じゃない」なんて断定できるわけではない。 じゃあ、雲雀さん歌ってみてくださいよ!というと次はお決まりのセリフ「噛み殺すよ」と言ってギロリと睨まれた。 でも、雲雀さんの歌声聞いてみたいなあ。さっきからわたしは音痴とか言ってるけれど、本心は絶対雲雀さん歌うまいと思うんだよね!



「歌うことは好きじゃない」
「そうですか?わたしは好きですけど。歌うと気持ちが良くなりません?」
「別に」



雲雀さんはわかってないなあー。本当に歌うことはいいと思う。ストレス発散にもなるし。 学校にいるときは屋上でよく歌うし(って言っても口ずさむ程度だよ?)よく放課後には沢田くんや獄寺くんたちを連れていくけど、 もうすんごい楽しいんだよね。ああ、今度無理矢理雲雀さんでも連れて行こうかな(そしたら、沢田くんとか怒るだろうか) なんて考えていると、雲雀さんが「でも____」と口を開いた。ん?と雲雀さんを見れば、わたしを見てふっと笑ってから。



「君の歌を聞くのは好きだね、



そう言った。
(ええええ!聞いたことあるんですか!?) (よく屋上で歌ってるじゃないか) (…うわああああああ!恥ずかしい!!!!っていうか、な、なまえ!)




(ええええ!聞いたことあるんですか!?)
(よく屋上で歌ってるじゃないか)
(…うわああああああ!恥ずかしい!!!!っていうか、な、なまえ!)