今日は金曜日。先週はわたしが三郎の家に泊まったから、今週はわたしの家だ。 三郎がたくさんのお菓子を持って「ただいま」と言って家に入ったときはなんだか嬉しくてにやけてしまう。 ずっと前に間違って三郎がわたしの家にきて「ただいま」と言ったとき、彼はとても恥ずかしがっていたけど わたしが「結婚したみたい」と微笑むと彼はその日からずっと「ただいま」と言ってわたしの家に入ってきてくれる。 わたしも三郎の家に行くとき「ただいま」と言ってみると三郎は照れたご様子で「本当に結婚してるみたいだな」 と言っていた。



「お風呂沸いたけど先はいる?」



ご飯を済ませて、食器を洗っているとピーッとお風呂が沸いたお知らせがくる。 テレビを見てくつろいでいる三郎に聞くと、彼は振り返ってニヤリと笑った。



、一緒に入る?」



わたしは持っていた布巾を振り回して「入るわけないじゃん!」と怒鳴った。 ずっと前に一緒に入ったとき、ひどい目にあわされたのだ。「今回はのぼせないように手短に終わらせるから」 と嫌味っぽくいう三郎に「する前提で言わないの!お風呂場はそういうことをするためにあるんじゃない!」 とまた怒鳴る。



「じゃあベッドならいい?」



もう、そういうことじゃなくて。なんていいあいをしてるとキリがないので、わたしは「じゃあ私先入るから」 とエプロンを脱いで椅子にかけた。絶対に入ってこないこと!と釘をさしてわたしは一番風呂に入った。 髪も身体も洗って、綺麗になったところであたたかい湯船につかる。「ふあーーー」と声を出すと 「じじくせえな」と声が聞こえた。間違いなく三郎の声だ。ん?と思いながら扉をみるとそこには三郎の姿。



「入ってこないでって言ったよね!?」



ギャー!とわたしは目をそらし、手で覆う。 しかし三郎は「入ってこないでってあんなに言われたら逆に入りたくなるもんだろ」と言いながら 普通に頭を洗い始めた。完全にもうでないつもりだ。でもあの行為をしなければ別にお風呂に一緒に入るくらいいっか、 と開き直ることにした。



「仕方ないから許すけど、一緒に入るだけだからね?この前みたいなことしないでね?」
「この前みたいなことって?」
「〜〜っ!もういい!とにかくだめだから!」



本当に三郎は意地悪、とぶつぶつ言っているとざぶんと湯船が揺れた。 三郎が入ってきたのだ。大量のお湯が流れていく。あ〜あ、と思っていると三郎がわたしを後ろから ぎゅ、と抱きしめる。思わず変な声が出てしまって、振り返って睨むと彼はニヤニヤとわたしを見ている。 しかしそれ以上は何もしてこないので一安心だ。二人でいつものように他愛のない話をする。





「小さい頃は、男のひとと一緒にお風呂に入るだけで妊娠しちゃうって思ってたんだよね」



親といくつまで一緒にお風呂に入っていたか、という話の途中で昔のことを思い出し、 わたしはぽつり、と三郎の手をいじりながらそう言うと三郎はぶはっと笑った。



「昔はも可愛いかったんだな」
「いまも、の間違いでしょ」
「そうだな、今もな」



ぶはっとまた笑った。そのたびに湯船のなかのお湯が揺れてこぼれる。 本当に昔は可愛かったなぁ。だって一緒にお風呂入って妊娠しちゃうなら、わたしもう妊娠しちゃってるもんね。



「俺以外の男と入ったことあるんだ?」
「残念だけど三郎以外の男っていうとお父さんしかいないわね」
「そうか、よかった」



三郎がわたしの肩に頭をのせた。濡れた髪が触れてくすぐったい。 「三郎、くすぐったい」そう言いかけたときにぎゅ、と三郎がわたしの手とからませてきた。



「どうし…っひゃぁ」



三郎がつう、とわたしの太ももに指を這わせる。油断していたので大きな声がお風呂場に響き渡る。 恥ずかしくて「ちょっと、」と身を捩じらせるけど三郎ががっちりと抱きしめてきて逃げられない。



「今から、イイコトするか」
「するか、じゃないのよ。言ったでしょ?!やめてって…んあっ」
「言っただろ?そんなに言われると逆にやっちゃいたくなるもんなんだって男は」



"妊娠、本当にしちゃう?"三郎がわたしの首に噛み付いた。









あふれる、欲情
「冗談でもああいうこと言わないでばか!」「別にいいだろ、だって子ども好きだろ」 「そういう問題じゃないのよ、そもそも結婚もしてないのに!」「じゃあ結婚する?」「えっ!?」