急にアイスが食べたくなって鍵をかけずに外へ出た。 コンビニでバニラアイスを買って家へ帰ると玄関に見に覚えのある靴があった。



「三郎」



ソファで横たわっているのは三郎だ。 隣の住人だ。付き合いは長い。こうやって無断に入ってくるのも慣れた。 そしてどうしてこいつがここにいるかもだいたい予想がつく。 私はコップに水を入れて彼に渡した。ほのかに甘い香水の匂いがする。



「いい加減やめてよね。女とヤッてからここに来るの」
「うるせー。今回は未遂だ、未遂」
「また?」
「酔った勢いでそういう流れになったんだけどさ」
「うん」
「そこでそいつの彼氏から電話かかってきたわけ」



そこで呼び出されて、はいさようなら!三郎は起き上がって水を一気飲みした。 私は今買ってきたバニラアイスを食べる。 三郎は馬鹿だ。いつも彼氏がいる女と寝るんだから。こういうことはよくある。 未遂に終わったときだけ私の家に来て愚痴を言うのだ。そんなの知ったこっちゃない。 彼氏がいる女を選ぶ三郎が悪い。



「彼氏がいない奴は本気になるだろ?」
「いいじゃん、そのまま付き合っちゃえば」
「めんどくさい」



三郎がめんどくさがりやなのは知ってる。 だからって恋愛までめんどくさいって言うのはどうかと思うけど。 そういうと三郎は「うるさい」って。



「てことで



三郎が私の上に乗っかってきた。食べようとしていたバニラアイスが棒から私の頬に落ちる。 それを三郎がぺろりと舐めた。



「よろしく」



私は知っている。未遂で終わったあと三郎は私の家に来て私とする。 他の女の匂いを漂わせながら。 普通の人だったら、嫌でしょう。でも私は嫌じゃないの。 だって、三郎が私のところに来てくれるから。私を選んでくれるから。 きっと私は三郎が好きなんだと思う。 でもこの気持ちを伝えたらきっと彼は私を選ばないだろう。 "めんどくさいから" だから気持ちを伝えない。なにより今の関係が心地いいのだ。 ずるい。私はずるい女だ。







こんな自分は嫌いだ