「不破くん!」 図書室へ向かう途中に、不破くんに会った。 彼は振り向いて驚いた顔をした。けれどその後に微笑んで「どうしたの」と聞いてきた。 そんな彼に、一週間前におすすめされた本を見せて「これおもしろかった!」と告げた。 それからまわりをきょろきょろと見回すけど、あの人はいなかった。 「今日鉢屋いないの?」 「ああ、三郎はまだお昼食べてると思うよ」 「あっ。そうなの。不破くんと鉢屋、いつも一緒なイメージあるから」 ちょっぴり残念である。本来の目的は鉢屋に会うことだったのだから(不破くんには悪いけど…) 何故かというと今度、男女ペアになって実習をすることになったからだ。 その、ペアを鉢屋に頼みたいのだ。 「僕じゃないの?」 「えっ…あ、いや!不破くんは、話もできるしいいんだけど」 もちろん、最初は不破くんにペアを頼もうと思っていた。一番忍たまで話をしているの彼だからだ。 けれどその実習で、下町まで行けるらしいし実習の課題さえ終わらせれば少しの間、 自由な時間がもらえるのだ。そのときに、下町においしいと噂の桜餅を鉢屋くんを誘って食べに行きたいのだ。 (以前、不破くんに鉢屋くんは桜餅が大好物だと聞いたからだ) もちろん、ちゃんと不破くんのぶんも買ってくるよ!?と慌てて言うと不破くんは笑った。 「鉢屋ペアになってくれるかな」 これでも鉢屋はくのたまで人気なほうだ。忍術がすごいこともあるし、 あの不適な笑みがたまらないらしい(もちろん、私もだ) だから、もし他の子に先越されていたら、とか。ちょっぴり心配だったりする。 「喜んでペアになろう」 でも鉢屋とあんまり喋ったことないし、どういった誘い方しようかと悩んでいると 隣の不破くんが言う。えっ?うん? 「残念だったな、。私は雷蔵じゃなくてお前が今会いたがっていた愛しい三郎様だ」 にやり、と笑う。しまった、この人は不破くんじゃなくて鉢屋くんだったのか…! って違う違う違う! 「愛しいとか言ってないよね!?ていうか騙すなんて最低だ!!!」 「最初に不破くんって声かけてきたのはだった」 「君は鉢屋くんなんだから不破くんじゃないの!なんで不破くんって呼んで振り返ったし!」 「なんとなく」 「はあ!?なんとなくでいつも人を騙してるのか!」 「嘘。だったから振り返った」 「えっ」 鉢屋は笑った。それから「桜餅楽しみにしている」と言ってから先を行ってしまった。 …卑怯だ!何嬉しいこと言ってくれてるんだ、鉢屋三郎!しかも不意打ち!!畜生かっこいいよ!! 不意打ちはだめでしょう |