忍者は弱音を吐くことは許されない。いつだって強気だ。 しかし人間、弱音を吐かないということは無理な話であって。 「(あ、泣きそう)」 縁側から少し離れたところにいる、一人の少女を見ながら私は思う。 その少女とは同い年のくのたま、だ。 ちょっと他のくのたまとは違う、純粋な子。 彼女は今、泣きそうだ。 「」 もう一人そこにいたくのたまと話を終えたが肩を落として こちらに向かっていた。名前を呼んでやると、は「三郎」と鼻をつまらせた声で私の名を呼んだ。 私は無言で彼女の頭を撫でてやると、ぷつん、ときれたようにの目からはたくさんの涙が溢れ出てきた。 どうしてが泣いているのかは、知っている。が一番仲良くしていた友人が試験中に 戦に巻き込まれ、亡くなったのだ。生徒が死ぬのは、珍しいことじゃない。 もそれを知っている。過去にもくのたまが数人死んだことがあるが、彼女は泣かなかった。 ただ、今回はが一番親しくしていた友人が亡くなったからだ。 「あの子は、私よりはるかに腕のいいくのたまだった。強くて、頭もよくて」 「が一番、慕っていたからな」 「なのに、こんなにあっけなく死んでしまうなんて」 「珍しいことじゃないさ」 「忍者ってこわい、怖い。死にたくない。嫌だ」 「じゃあ、は忍者になることを諦めるのか」 少しの沈黙のあと、は首を振る。小さな声で「忍者になりたい。強くなりたい」と言った。 「泣かない、弱音は絶対吐かないって決めたのに、三郎が頭撫でるから」 「忍者も時には弱音を吐きたいときもあるさ」 「私、三郎にはかなわないなあ」 「それでいい。私の前では弱音を吐いていい」 を抱きしめてやると、彼女はびくり、と肩を揺らした。 「だから、だめだって…」と弱弱しい声で言う。それからしばらくして服が涙でにじんでいくのが わかって私はさらにを強く抱きしめた。 泣かないでなんては言わない |