目の前には同じ顔が二つ。最初にこの二人を見たときは双子だと思っていた。本人(と言っても鉢屋だけ)も 「私達は双子なんだよ」とか言うからそれを信じていた。 けれどこの二人が双子ではないと知ったのは、それから一年くらい経ったときだった。 友達が「本当に双子みたいよね、あの二人」と彼等を見て言ったのであった。 そこで知る。あの二人は双子ではないと(そして鉢屋と不破という名前だということも知った)

そんな過去を思い出して変な顔をしていたのだろうか。鉢屋が私の眉の間をぐいっと押す。



「何気難しい顔してるんだよ」
「嫌な過去を思い出してね」
「ああ、私等のこと双子と思っていたことか」



にやり、と鉢屋が笑う。



「ひどくない?そのとき不破も違うって否定してくれればよかったのに」
「ごめん。信じてすごくきらきらした目で僕達見てたから」
「そりゃ、双子なんて初めて見たもの」
「あのときの信じたは笑えた」



またにやり、と鉢屋が笑う。 それにむかついて足を思い切り踏んでやろうと思ったけどすばやくよけられた。 けれど私はあきらめが悪い性格なのでまた踏もうとする。けど鉢屋はよける。 不破は「二人とも大人気ないよ」と笑うけど私たちは続ける(鉢屋め!!!) するとそこへ「あの、不破先輩」と不破を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると桃色の装束を着た女の子。 確か一つ下のろ組の子だ。彼女は不破を呼んだのに、不破が返事をする前に鉢屋が「なに?」と答えた。



「松千先生が呼んで、ました!」
「ああ、ありがとう」



彼女は顔赤らめて「では!」と勢いよくその場から立ち去った。 姿が見えなくなったあと、鉢屋が「だってさ、雷蔵」と言った。そんな彼に不破は「雷蔵!」と怒鳴った。



「あーあ!かわいそう!あの子不破に憧れてる子なのに鉢屋なんかに答えられちゃって…」
「あっちもわかってなかったらいいだろ」
「そういう問題じゃないよ!…はあ。いつも言ってるのに」
「でも憧れてるのに不破と鉢屋の違いに気付かないのかねー」



不破は優しくて鉢屋は意地悪でこんなに違うのに!と嫌味っぽく言うと鉢屋に「うるせえ」と頭をはたかれた。 不破はまたため息をついて「じゃあ、先生のところに行ってくるよ」と行ってしまった。 (めんどくさい鉢屋を置いていかないで不破!!!)



「お前も最初は私等のこと区別できなかったくせに偉い口たたけるな」



ふん!と言うけど私にはさびしげに聞こえた。確かに見たときは双子だと勘違いしたし、 しばらくしてもどちらかわからなかった。でもこうやってからんでいくと違いというのは すぐにわかった。今まで何故気づかなかったのか、と不思議に思うくらいにだ。 (よくよく考えれば不破は優しい顔してるけど鉢屋はいつも何かたくらんでいる顔をしている) 鉢屋が不破のふりをしても私はわかってしまう。どうしてかわからない。 でもそれを不破に言うとすごく嬉しそうな顔をしたのを覚えてる。



「私には効かないよ。不破の真似したって」



一瞬でわかっちゃうわ!と自信満々に言った。 いつもなら「偉い口たたくな」とたたく鉢屋だけど京は違った。 鉢屋は「おー、そうか」と無表情で答えるだけだった。 いつもと違う鉢屋。だけど私はそれ以上何も言わなかった。 ねえ、鉢屋。今何を考えている?







無表情