整理してみよう。私は、10代目の様子を見てこいとスクアーロに任務(というほどの仕事じゃないけれど)を任された。日本に行くなんてこんなことぐらいしか機会がなかったし、10代目に会えるのが嬉しくて旅行気分だった。てっきり1人で行くと思っていたのに、いつの間にか横にはベルがいた。「俺も行く」そう言って。 それから並盛へついて、10代目の家に向かっている途中に、目の前に10年バズーカを持ったランボが泣きながらこっちへ向かってきて…。そうだ、私は10年バズーカに当たったんだっけ。



「(ってことは、ここは10年後の世界?)」



まだ、10年バズーカによって作られた煙がまわりを囲んでる。この煙がなくなったら、一体どんな光景が見えるんだろう。これで普通の景色だったら、なんか期待外れだなあなんて思いながら待っていると、目の前に黒い影が見えた。 私は敵だと思ってつい構えてしまったけれど、「ッシシ、もしかしてこれ、10年バズーカ?」という声が聞こえたので、構えるのをやめた。この笑い方と、この声はもしかして。



「ベル?」



煙の中から現れたのは、ベルだった。だけど私の知っているベルではなくって。背が高くて、髪もストレートなんかじゃなくてくせっ毛みたいで、王冠も輝いてはいるけれど少しさびてる。それに…なんだか色っぽくなった。 私の知ってるベル(つまり10年前)は16歳だけどまだまだ子供っぽいところがある。



「ッシシ、お前ちっせー。こんなに低かったっけ?」
「ベルが高くなったんだよ…、きっと」
「でもさあ、タイミング悪すぎ」



はあ、と大きなため息をつかれた。何がタイミング悪すぎ、だ。こっちは好きでこの世界に来たわけじゃない。(だけど、初めて10年後の世界に来てわくわくしてた)今来て何が起こっているかもわからないのにそう言われたって困る。 決して私のせいではない…と思う。



「好きで来たわけじゃないし」
「ッシシ、んなこと知らねえし」
「…ベルは、今私といたの?」



そう聞くと、「任務の帰り」と答えた。いつもならすごい血の匂いがするんだけど、ベルからは甘い香りしかしなかった。今回の任務は簡単だったのかな、なんて考えているとベルが「で?どう責任取ってくれんの?」と問うてきた。え?何が?と聞き返せば、またあの独特な笑いをしてからこう答えた。



「今、にキスしようとしてたんだけど」



けど、お前来てキスできなかったし。そうベルに言われた。はあ?そんなこと知らないし!なんて言おうとしたけど、よくよく考えれば今ベルは何て言った?私にキスをしようとした?(正確には10年後の私に)え?と思わず口に出して驚いた顔をすれば、ベルは笑った。



「え?ええ?10年後の私とベルの関係って?え?」
「きーもー。何驚いてんの?」
「きもって失礼な!驚くに決まってんじゃん!」
「ッシシ、もしかして付き合ってるとか思ってる?」
「え!?違うの!?」



だけどベルは、「さあ?」と言って笑うだけだった。(これ、昔からのクセ。質問してもさあ?しか答えてくれない。嘘か本当かわからない答え方。今も変わらないんだ…)でも、付き合ってたら嬉しいとか思った自分がちょっと恥ずかしかった。でもキスをするのなら、付き合ってるんじゃないの?



「で?どう責任取ってくれんの?」
「はあ?責任?そんなの知らないもん」
「知らないじゃねえし。俺今キスしたい気分なんだけど」
「あと3分くらいで元に戻るんだから…」
「ッシシ、じゃあ、今する?」



ベルはどうしてこうなったんだろう。いつからこんなことを言う子になってしまったんだろう。私は目をベルから逸らして「嫌だよ」と答えた。どうして10年後の彼のわがままでキスをしなきゃいけないのよ。キスするなら、10年前のベルのほうがマシ!



「いいじゃん。どうせお前、まだ俺とキスとかしてないじゃん?」
「そ、それはそうだけど…。初めてベルとするなら、10年前のほうがいい!」
「今の俺の方が上手いけど?」
「別に下手でもいいもん!」



ジリジリとせまってくるベルはにやにやしてた。絶対、からかってる。もう26歳のくせして、10年前の私をからかうなんてムカツク。10年前に戻ったら、ベルに八つ当たりしてやるー!(でも、怒られるかな)なんて思ってたら、すぐ目の前にベルはいた。やばい、もう後ろは壁だ。



「ベル?冗談だよね?ほら、10年後の私の方がいいでしょ?」
「ッシシ、別にだし」
「(ちょっと、その言葉嬉しいかも)」
「じゃあ、いただきまーす」



気付いたら、ベルの顔はすぐ目の前に。キスされる!なんて思いながら目をぎゅっと瞑るとボンッと大きな音がした。あ、もしかしてと思ったら目の前には10年前のベルがいた。(戻ってきたんだ)目をぱちぱちさせてると、ベルが「やっと戻ってきたし」そう言った。



「うん。お久しぶり」
「久しぶりとかじゃねーし」
「とりあえずさ、ベル。絶対にあんなんになっちゃだめだよ」
「はあ?意味わかんねえし」



ベルは「任務済ませて、ジャッポーネ巡りしようぜ」なんて言って私の先を歩き出した。そんな彼に、10年後の私はどうだった?とか綺麗だった?とか聞くけど、「さあ?」としか答えない。だけどぼそっと呟いたのを私は確かに聞いた。「10年後のお前、結婚指輪してたし」と。…あれ?そういえば10年後のベルも結婚指輪つけてたっけ。ああ、そうかそういう意味か。付き合ってるんじゃなくって、結婚してるんだ。「10年後のベルも結婚指輪つけてたよ」なんていうと、ベルは「うるせー」と言うだけだった。







(戻ってくるの遅すぎ)(タイミングいいよね、結婚記念日に入れ替わるのって)(どーでもいいし)
(10年前の私たち、きっと今頃驚いてるだろうね)(ッシシ、お前絶対ニヤけてる)(失礼な)