「なにこの部屋!暑い!」 久しぶりに蔵に休みができたから、蔵の家に来た。 インターホンを鳴らすとお姉さんが出てきて 「蔵は部屋にいるわ」と優しく言ってくれた。 あたしはそのまま2階へ上がって蔵の部屋に入る。 すると、暑い熱気があたしを襲った。 「すまんな、今日の朝エアコン壊れてしもたん」 「ううん。大丈夫だけど…蔵は午前中ずっとこれで過ごしたの?」 「ん〜、そうでもないなぁ。リビングにおったから」 蔵は自分の隣をポンポンとたたいた。 隣に来て座って、という意味だろう。 いつも蔵の家に来たりすると決まって最初にこうする。 あたしは素直に蔵の隣に座った。 「でも、ほんとに暑いね」 「、首んとこ汗かいとる」 「そりゃ、そうだよ。蔵の家まで歩いてきたんだから」 蔵の家で飼ってる猫のマリンがあたしの膝の上に乗ってきた。 少しマリンが冷たく感じた。そのことを言うと、蔵は 「さっきまでエアコン効いとるリビングにおったからとちゃうん?」と言った。 しばらく他愛のない話をしていたら、膝の上に乗っていたマリンが 「にゃあっ」と何かに驚いて部屋から逃げていってしまった。 「どないしたんやろ、マリン」 「たぶん、あたしの汗がマリンの鼻の上に落ちちゃったからかも」 「すまんな、ほんま」 「ううん。大丈夫。けど、歩いてきたからやっぱり汗くさいかも」 「シャワー浴びる?」 「いいの?」 「ええよ」 じゃあ、遠慮なく浴びようかな。 あたしは立とうとした…けれど、蔵がそれを止めた。 いきなりのことだったからバランスを崩してあたしは蔵に抱きしめられた。 「…どうしたの、蔵。あたし汗くさいよ?」 「の匂いする」 「もーっ、やめてよ。それ汗の匂いだよ〜、たぶん」 「ちゃう…。甘い匂い」 「…暑いよ〜」 「なぁ、今からいいコトせぇへん?」 「はあ?!」 蔵、どうしちゃったの?暑さで頭いっちゃった? ていうか、さっきシャワー浴びるって言ったよね? お姉さんもいるでしょ? 「シャワー浴びる前にいいやん。姉ちゃんも来たら出かける言うとったし」 「ねえ、どうしたの?」 「しゃーないやん。ミニスカにタンクトップって。誘ってるようにしか思わんやろ」 「誘ってないし!!」 「なぁ〜、やろ?」 「甘えたってだめ!」 「…」 蔵があたしの耳元で名前を呼んだ。 うわあああ!だめだよ!耳弱いんだから! 思わずあたしは「ひゃっ」という声を出してしまった。 あああああ!!何やってんだあたし! これじゃ、蔵のペースだ。 「く、蔵、ダメだって。汗かいててベタベタするし…っ」 「大丈夫やって。汗かいてるからこそするんやろ」 「しないからーっ!ね?まだ明るいし」 「電気消してカーテンしめれば暗くなるっちゅーねん」 「雰囲気とかあ、あるじゃん!?」 「今まさにそういう雰囲気とちゃうん?」 「だからっ…っきゃ」 蔵はそのままあたしをベッドに押し倒した。 ああ、もうだめだ…。もう蔵のペースに巻き込まれた。 この先何を言っても無駄である。(今までの経験上) これなら、家デートじゃなくって普通に遊園地デートとかにしとけばよかったなあ なんて考えていたら、目の前に蔵の顔がきて、そのままキスされた。 汗だくなんだからいっそいいことしよう (もう1回ええ?)(だ、だめに決まってるでしょ!)(じゃあ、もう1回)(ええ!?) (10.08.5) |