朝からみんな夏休みに何をしようかって話で盛り上がってる。 しょうがないもんね。今日は終業式だから。 明日から、みんな楽しみにしていた夏休みだもん。 「おう!!」 「おはよう、丸井」 丸井は、あたしの前の席。 だから、暇があると後ろを向いて喋りかけてくれる。 「おはよう、仁王くん」 「おはようさん」 その丸井のおかげで、ずっと見てるだけだった仁王くんとも 喋れるようになった。最初は緊張してどもったりしたけれど もう慣れて普通に話せるようになった。 (最初は本当にすごかったんだよ!) 「みんな朝から夏休みの話だよねー」 「だよな!俺等にとっちゃ中学最後の夏休みだし」 「そっかー…最後かぁ…」 「寂しいのう」 まだ高校があるけどな、って言う丸井を見て仁王くんとあたしはくすっと笑った。 立海はエスカレーター式だから、みんな高校がわかれるってことはあまりない。 丸井と仁王くんだってそのまま上がるって言ってたから、また一緒。 そのあと、すぐに終業式に出てあっという間に終わった。 横にいた丸井は「こんな短いんだったら、来なくていいだろぃ」なんて言ってるけど、 あたしはそんなこと思わない。 だって、仁王くんに会えるから。 「夏休み楽しみだけど、部活だよなー」 「全国大会近いしのう」 「でもいいじゃん。みんなと会えるんだからさ」 「は部活入ってなかったもんなぁ」 ほんとの夏休みじゃん!って羨ましそうに丸井に言われた。 だけどあたしは丸井が羨ましいよ…。 毎日仁王くんに会えるんだからさ…! もう部活も補習もないあたしは、9月まで学校に行くことなんてないんだし。 「じゃあ、俺等1ヶ月は会わないってことだろぃ?」 「そうなるのう。じゃが、長いようで短いもんじゃよ」 「そうかなー?あたしにとっては長いようー」 夏休みっていえば、イベントたくさんあるのに。 花火大会とか、お祭りとか。青春真っ盛りじゃん。 こんなイベントを仁王くんと行ってみたいなーなんて思うけど 無理に決まってるよ。だって仁王くんにとってあたしはただのクラスメイトなんだから。 「俺は1ヶ月後のに期待」 「え?なんで?」 「いるじゃん?夏休みに激変してかわいくなる子とか」 「つまりあたしがかわいくないってことを言いたいのね」 とりあえず丸井を一発殴っといた。 自分がかわいくないっていうのは自覚してるけど、他人にそういわれると ショックである。慌てて丸井は「冗談に決まってるだろぃっ」って言うけれど さっきのは本気で言ったに間違いない。 「は充分可愛いぜよ」 小さくため息をついたときに仁王くんがそんなことを言った。 驚いて顔を見てみると、にっこりしてあたしを見ていた。 う、そ?冗談だよね? 「や、や、やめてよっ!じょ、冗談よしてよ、に、仁王くんっ」 「めっちゃどもってるー」 「うるさい、丸井!」 とりあえず、もう一度丸井を殴って。 再び仁王くんを見ると、「ほんとのことなんじゃけど」と言った。 「だ、だからほんとに冗談は…」 「素直に喜ぶことやと思うんやけどの?」 「うっ…ありがとう」 嬉しいけども…!仁王くんて詐欺師って呼ばれてることがあるから そういうところわかんないんだよね!本気か冗談か。 でも、素直に信じていいと思ってあたしはお礼を言った。 そしたら仁王くんは「ん、」と言って笑った。 ああ、その笑顔反則。 「いいところ悪いけど、仁王。もうすぐ部活始まるぜ」 「そうやのう。行くか」 2人は立ち上がって鞄を肩にかけた。 「じゃあな、。だらけた夏休み過ごすなよ〜」 「過ごさないもん!」 「また2学期にの」 「「またな」」 2人は部活に行ってしまった。 最後、あっけなかったなぁ。 そりゃ、一生会えないわけじゃないんだから、改まって別れの挨拶するわけでもないけれど。 たった1ヶ月ぐらいのことなんだけど。 好きな人に会えないのは辛い。それにさっきあんな嬉しいことを言われたから尚更。 窓から外を見ると、仁王くんと丸井が楽しそうにコートに向かっていく姿が見えた
シリアスっぽく書きたかったけど、なんかちょっと違う。わたしが中学3年ときは 補習やら部活やら、体育祭の準備で毎日学校に行ってみんなと会ってたけれど、 高校になると、やっぱり会うことが少ないなぁって思いました。部活やってない人はもっと 会うことが少ないと思う。(10.07.30) |