まだ7月なのに35度という暑さ。
それに、四天宝寺全生徒がこのせまい体育館に集まっており、熱気がすごいため
朝練をさっきまでしていた謙也にはその暑さが我慢できなかった。




「あっつー…」




さっきから暑いとしか言っていない謙也を見て、隣にいたが 「うるさいんやけど」と言った。




「暑い言ってるとこっちまで暑くなるじゃん!」
「ほんまのこと言ってるだけやろ。なんでお前は涼しい顔してんねん」
「まぁ、さっきまでエアコン効いてた教室にいたし…」
「ずっりー!」
「けど、謙也と比べて白石はめっちゃ涼しい顔してるやん」




ほら、と言っては謙也の前に立っている白石を指差した。
それに気付いた白石は「なんや?」と振り向いてきた。




「うわ、ほんとや。なんでお前そんな涼しい顔してんねん」
「そんなこと言われてもなぁ」
「イケメンはそこまでもが違うだよ、きっと」
「黙れや。俺かて白石には勝てんけど…」
「はい、黙って。そんなこと誰も言ってほしくありません」
…、俺心はガラスのように…」
「わかったって」




ほんま、かわいくない女やな!と謙也が言うと、思いっきりに足を踏まれた。
「痛っ!!」というと、ちょうど校長先生が話を始めた頃で体育館が静かだったため、
謙也の声が響いた。




「謙也ぁー!静かにせぇやー!」




声ですぐにわかったのか、オサムちゃんがマイクで注意した。
まわりの子はくすくす笑って、謙也は顔が真っ赤になった。
そして隣のを見ると、ざまぁみろという顔をしていた。




「ていうか、何でみんなで校長先生の話聞いてるん?」
「は?」
「身なり検査とちゃうん?」




そう言うと、隣にいたは「本気なん?」と言って驚いた顔をするし、
白石はまた振り返って「何言うとるん?」と言ってきた。




「いや、だから、…」
「あの謙也が?」
「つい1週間前までははよ、ならんかなぁとか嬉しそうに言ってたくせに」
「「ありえん」」
「だから、何のことやねん!!!」




また謙也の声は体育館に響いた。
校長先生を見ると、自分の話に対して謙也がコメントしたと思ったのか、
不機嫌な顔をした。それを見て謙也は慌てて違いますと解釈した。
そしてまたオサムちゃんにマイクで注意され、今度は全校生徒に笑われた。




「「どんまい、謙也」」
「いや、お前等のせいやからな?」




むっとした顔でと白石を交互に見たが、2人はクスクス笑うだけだった。
何で集まってるん?そろそろ教えてや、と言っても2人は「校長先生の話を聞きなさい」というだけであった。
(いつもは真面目に聞いてへんのに)




「え〜、では、みなさん。次に会うのは9月です。楽しい夏休みを過ごしてください」
「…ぇぇええええ!?!?」




校長先生の話が終わり、教頭先生が「礼」と言おうとする前に、再び謙也の声が体育館に響いた。
集まったのは、身なり検査ではなく終業式のためであったのだ。
夏休みを誰よりも楽しみにしていたのだが、すっかり忘れていたのだ。




「ほんまなん!?」
「いや、だから校長言ったじゃん」
「ほんまに忘れてたんやなぁ」
「おっしゃ!遊んでやるでえー!」
「忍足〜!わかったから、静かにせぇ!今はまだ終業式中や!」




今度はオサムちゃんではなく、教頭が注意した。
また再び笑いがおき、そのまま終業式は終わった。
さっきまでだるそうにしていたが、今では元気を取り戻して機嫌がいい謙也。
それを見て白石は「単純やなぁ」と微笑んで言った。

そしてと夏休みに何をしようか、と話をしながら体育館から出ようとしたとき、
マイクでオサムちゃんから「謙也ー、校長先生がお呼びやで〜」といわれた。




「きっと、説教だろうね」
「え、俺なんかしたか?」
「めっちゃしたやん。話妨害したやん」
「ええ!?」
「「どんまい、謙也」」
「うっさいわ!!ていうか、全部お前等のせいやん!」






夏が始まる!
Youth of me etc. starts now






始まりました。夏企画!こういうのずっとやってみたかったんですよね(笑)最初はやっぱり3-2ペアにしよう って決めてたんです。(10.7.26)