![]() 弁当をつくっていると、部屋から涼太が出てきた。 ふらふらとまだ眠そうで、椅子に座るとテーブルに突っ伏した。 起きてー、と声をかけながらそのテーブルに食パンの上に目玉焼きを のせたのを置くと、さっきの眠気さはどこにいったか、勢いよく起き上がって 「の朝ご飯!」と嬉しそうに食べ始めた。 たいしたものじゃないけど、って言うけど彼は聞こえてないようで、もぐもぐと食べている。 「本当に今までどんな食生活してたの」 「んー、朝はコンビニとかのパンとか?」 「手料理とかまったく?」 「が作ってくれたときぐらいッスね」 よくここまで元気な体でやっていけたな、と思う。 彼は大学に通いながらモデルもやっているし、バスケだってしているし。 忙しいのは当たり前で仕方がないのもわかる。 でも、これから昨日みたいに少しずつ涼太に教えないとなあ、と思いながら 私も朝ごはんをまだ食べていないので、お弁当箱を鞄に入れてから 椅子に座った。すると涼太は「俺のは?」と聞いてくる。 「なにが?もう一枚食べたい?」 「違うッス。弁当」 「え?今日は撮影でしょ?」 涼太は昨日言ってた。今日は大学に行かないで一日中撮影だ、って。 だから、お弁当も私のぶんしか作っていない。 涼太が大学へ行くときには、なるべく作ろうと思っているけど、 流石に撮影とかになるとあっちでおいしいお弁当とかが当たるだろうな、って思って。 だから今日も撮影だけって聞いたから作らなかったんだけど…、って言うと涼太は不満そうな顔をした。 「撮影のときも、の弁当食べたい」 「えー、あっちでもっとおいしいのとか、外食とかするでしょー?」 「いいッス!俺、のがいい」 「お弁当なんてそんな大したものじゃないよ?」 「のおいしいッスもん」 「んー…」 「お願いッス!」 ね?と頼んでくる涼太はまるで子犬のようだった。それが可愛くて、いつもこうやって頼まれると しょうがないな、って許しちゃう。だから今日も、しょうがないねって言うと彼は喜んだ。 「自慢するッス」 「それはやめて。ただの弁当なんだから」 「えー」 「えー、じゃないの。あ、それと今日の弁当は勘弁してね?明日からはちゃんと作るから」 「楽しみにしてるッス」 それから片付けを一緒にして、涼太が着替えるために部屋に戻った。 さっき一緒に行こうって言ってたけど時計をみると結構ギリギリだった。 だから、先行くねって部屋に向かって言って靴をはこうとしたけど涼太が私の腕を掴む。 見るとまだ上は着替えていない。ど、どうしたの。 「俺が乗せてくッスよ」 「いいよ。歩いて十五分で着くし」 「でも車のほうが早いッス」 だから、待ってて。って言ってまた涼太は部屋に戻った。 涼太の大学も歩いて三十分くらいには着くから普段は歩きみたいだけど、 撮影に行くときは車だ。涼太は自分の車を持っている。 だからデートでちょっと遠出したいときも涼太が車を運転してくれた。 私も一応免許は持ってるけど運転したことがあまりないので乗りなれていない。 それに自分の車も持ってないし。 しばらく待っていると、おしゃれな服を着てばっちりの涼太が部屋から出てくる。 さっきの眠たそうな涼太の面影はどこにもなくて、可笑しくてくすくす笑ってると 涼太が「なんスか」っておでこをつついた。 「さっきの眠そうな涼太はどこいったのかなあって」 「外に出掛けるんだから、俺も切り替えるッスよ」 「じゃあ、さっきの涼太知ってるのは私だけだね」 靴を履きながら言うと涼太は「可愛いこと言っちゃって」とまたおでこをつついた。 それからマンションの地下まで行って涼太の車に乗った。 歩いて十五分くらいで着いちゃうから、車では十分もかからなかった。 そして入り口からちょっと離れたところに車を停めてもらう。 「じゃあ、いってくるね」 「」 降りようとしたときに名前を呼ばれて振り返ると、ちゅ、と軽くキスをされた。 「ちょっとー、ここどこだと思ってるの?」 「気にしないッス!じゃあ、いってらっしゃい!」 「気をつけてよ?じゃあ、涼太も撮影頑張ってね」 手を振って私は車を降りた。それから歩いていると、ユウがいたので私は駆け足でユウの元へ行った。 ユウは私と涼太が付き合っていることを知っているので「昨日から同居しはじめたよー。幸せ!」って 言うと「このノロケが」と頭をつつかれた。それから涼太のことで話してるとメールの着信音が鳴る。 開いてみると涼太からだった。 『終わったら電話!迎えに行くッス(*´∀`*)』 私は可愛い顔文字、なんて思いながら『わかった♪』と返信した。 TOP |