大学の食堂で食事をしていると、急にミカが「さぁ、」と言った。 なに?とお弁当を開けながら問うと彼女はそのお弁当を見た。 私もお弁当を見る。今日は特に気合も入っていない、普通の弁当だ。



「毎日自分で作ってるんだよね?」
「うん。そうだよ」
「一日くらい食堂で食べてもいいんじゃない?最近ずっと弁当じゃん」



そういえば二年生になってから毎日弁当だ。 友達が学食を利用したい、というので食堂に来てはいるが私はここ最近学食を利用していない。 もともと料理を作るのは得意なので、毎日お弁当を作るのも苦ではないけれど 私にはもう一つ理由がある。けれど、言いにくいなぁ、なんて思っていると もう一人の高校のときから仲良いユウが「だめだめ」と喋りだす。



は自分のためだけに作ってるんじゃないのよ」
「え?そうなの?でも一人暮らしだよね?」
「あーっと…そうではないんだよね」
今彼氏と同棲中!」
「うそ!?てか彼氏いたの!?」



なになに、詳しく聞きたい!とミカは目を光らせながら私を見る。



「えー…」
「でも、だからかー!最近綺麗になったと思って!雰囲気一年生のときと比べると変わったよね?」
「そう…だね。彼と暮らし始めていろいろ環境も変わったから」
「いいなぁ。出会いは?かっこいいの?」
「うん。中三のときに同じクラスになってから仲良くなって高校も同じでーって感じかな。すごいイケメン」
「うわー!みたい!いつ付き合ったの?」
「高校…二年生くらいかな?」
「両思いだったのにお互いなかなか進まなくってさあ!」
「ちょっとユウやめてよ!」
「へー!じゃあもう…四年くらい?すごい!」
「うわぁ、もうそんなに経つのかあ。でも同棲は本当に最近だよ」



もともとは大学が実家から遠かったので、一人暮らしだった。 それでも電車で二駅先まで行かなくてはならなかった。 別に長い時間でもなかったけど、彼が「俺の家のほうが近いッスよ」と言ったのが始まりだった。 本当に彼のマンションから大学までは徒歩十五分くらいのところだった。 そして彼は一緒に住めばいいじゃないか、と言い出したのだ。 私の意見も聞かずに彼は勝手に私の親に電話をする。 普通なら許されないことなのに、畜生両親とも彼のことをとても気に入っているのだ。 電話を終えるとにこにこした顔で「いいって」と言った。 それから同棲が始まったのである。



彼の名前は、黄瀬涼太である。








TOP