ブラックとジェームズに悪戯をされてびしょ濡れになった事件から1週間。 自分から犯人だとブラックに言ってしまってから4日。飛行訓練のときに助けてもらってから2日経った。 この1週間で変わったことは、ブラックと話すようになったこと。 そして悪戯を頻繁にされるようになったこと。 どうしてこうなったか、リリーに何度も聞かれるけどそんなのわたしが知りたい。 (あとちょっぴりブラックを見るとどきっとすること)



「いいことじゃないか」



ジェームズに相談をすると他人事のようにさらりとそういわれる。 ジェームズはいいもんね。わたしとブラックが会話をしている間は、一緒にいるリリーと話ができるんだから (そういえば最近、ジェームズに対するリリーの態度が優しくなった気がする) 別にブラックが嫌というわけじゃない。 つい最近まではそう思っていたけど、話すようになって実は彼がいい人なんだ、って思うようになった (悪戯をしたりするところは、まだ許せないけど)



「違うの。女の子たちからの視線が痛いのよ。特にブラックの現彼女!名前はシエルだっけ?」
「シルクだよ。まあ、確かにあの子の視線痛いねえ」
「呪いをかけられるんじゃないかってびくびくしてるの」
「だったらやり返せばいいじゃないか」
「簡単に言うけど、わたしはあなたみたいに成績優秀じゃないから使えない魔法だってあるんだから」
「この間みたいな悪戯でもしてやればいいじゃないか」
「もう絶対にやらない!」



また自分から犯人だって口走ってしまうかもしれないし、彼女たちの仕返しがくるかもしれない。 それこそ、わたしはこのホグワーツから出て行かれるかもしれない!(女の子って怖いよね) (そうよ、女の子って怖いのよ)



「ジェームズと、か」



チェスをしながら話をしていると、談話室のドアが開いた。 入ってきたのはブラックでわたしたちを見ると驚いた顔をした。 わたしとジェームズが2人きりなんて珍しいもの(何故なら今までわたしがそうなるのを避けてたから!)



「エバンズは一緒じゃないのか?」
「リリーはスラグホーン先生に呼ばれたみたい」
「リリーは真面目だからね!あの先生に気に入られてるみたいだよ。どっかの誰かさんと違って」
「あら、どっかの誰かさんてわたしのことかしら」
「でもは頭悪いって聞くけどな」



わたしとジェームズの間にあるソファに座ったブラックはにやり、と笑った。 確かに、薬草学とか魔法薬学とかは苦手だけれど、天文学なら得意なんだから。 けれど彼らは「天文学って将来に役立つ?」って笑った(ほんっとこの人達意地悪い)



「ブラック、その持ってるいるのなに?勉強でもしてたの?」



ふと、ブラックが持ってる分厚い本に何枚かのレポート羊皮紙が気になり聞いて見ると彼は 「魔法薬学でレポート4枚提出だったろ?」と言ってチェス台の前にどすん、と持っていた本と分厚い羊皮紙を置いた (そのときに折角やっていたチェスがばらばらになってジェームズが「ひい!」と小さな叫び声をあげた) 羊皮紙には綺麗な字でびっしりと文字が詰まっている。



「もしかしてやってないのか?」
「やってるも何もそんなの初耳だけど…」
「1週間くらい前に先生が言ってただろ」
「えー…(そんなことあったっけ…)」



課題が出たら、真っ先にやるんだけどなあ、って呟くとジェームズは笑った。



「きっといつもみたいには調合を間違えて大変になってたんじゃないかな」
「いつも失敗してるわけじゃないよ!」
「どーすんだよ。今からやるのか?」
「え、あ…うん。リーマス誘ってやろうかな」
「僕ならもう終わったよ」



ブラック、ジェームズ、わたしは驚いて声がした方を見ると、羊皮紙を見せてにこにこしてるリーマスがいた。 誘ってくれたっていいのに!だけどリーマスは「なら先に終わってるかと思って」と言う。 どうしようかな。あきらめて明日忘れましたって言う?だめだめ。 ただでさえ魔法薬学は成績が悪いのに提出物まで出さなかったら進級できなくなっちゃう。 今から一睡もしないで頑張れば間に合うだろうか。とぐるぐる考えているとリーマスが 「シリウス、魔法薬学得意だったよね?」とブラックに問うた。



「あ?ああ。得意分野には入るけど」
「じゃあ決まり。、シリウスに手伝ってもらないよ」
「え!?」
「は!?」
「シリウスにとっては簡単でしょ?」
「まあ、レポートくらいなら1時間で終わるしな」



1時間!?わたし2枚のときだけでもそれくらいかかるのに彼は4枚を1時間で仕上げたの? でも、一晩かけてやるより、彼に手伝ってもらって1時間で終わるほうが絶対いいに決まってる。 でも、ブラックはそこまでしてくれる?だってたった今レポート書き終えてここにいるんだし…。



が手伝って欲しいって言うなら手伝ってやってもいいけど」



ブラックが言ったのは意外な言葉だった。びっくりしすぎて思わず「えっ」と声を上げてしまった。 確かに最近いい人だなっては思ってたけど課題を手伝ってくれるほど彼は優しかったっけ。 わたしはてっきり「無理」とか言うかと思ってたんだけどなあ、って思ってまじまじとブラックを見てると 彼は少し眉を寄せて「どーなんだよ」と聞いてきた。



「ブラックが手伝ってくれるなら…頼みたいんだけど」
「だから言ってるだろ。お前が頼んだらやるって」
「じゃあ、お願いします」



仕方ねえな、ってブラックはふっと笑って立ち上がった。 そしてチェス盤の上にのせていた本と羊皮紙を再び持った。 そんな彼をまたじっと見つめていると「ほら、行くぞ図書室。用意してこい」って言ってきたから わたしは急いで彼の機嫌が悪くならないうちに準備をして行かなきゃ、と思った。 「じゃあ、ちょっと待っててね」とブラックに告げてからわたしは女子寮に入っていった。



***



「きっとは君が優しすぎてびっくりしてるんじゃないかな」



ジェームズは崩れていたチェスの駒を一つ一つ直しながら言った。 シリウスはが入っていった女子寮のほうに向けていた視線をジェームズに向けて 「俺は優しいだろ」と言った。



限定にね」
「はあ?シルクにも優しくしてるっつーの」
「そーかな?」



くすくすと笑うリーマスを見てシリウスはため息をこぼした。 最近、この2人はのことになると何かいろいろと言ってくるのだ。 魔法薬学だって、シリウスよりジェームズのほうが成績はいい。 レポートを書くのだってジェームズのほうが得意だ。 シリウスはぽつり、と「お前等の考えてることはわかんねえな」と呟くとジェームズは 「それはこっちのセリフだよ」と鼻で笑って言った。 シリウスはムッときて何か言い返そうとしたが、が息を切らして戻ってきたのであきらめて 彼女と図書室に行くことにした。



「ほんとシリウスって見てておもしろいよね」
「自分のことになると鈍いもんなあ、シリウスってば」



シリウスとが談話室から出て行ったあと、ジェームズとリーマスはチェスを始めてけらけらと笑った。







10. Two persons are watched ふたりを見守る





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