「よお、隣いいか?」



休日1日目はジェームズとリーマスには会っていろいろ話をされたが、 ブラックとは会いはしたものの会話というものはしていない。このままだったら今日だっていける。 わたしは昨日と同じように早くに朝食をとっていた。すると誰かがそう声をかけてきた。 男の子からそう声をかけられるなんて珍しい、なんて思いながらも「どうぞ」と言いながら目の前にある クロワッサンを2つ小皿に乗っけた。



「朝からよく食べるな」



ぱくりとクロワッサンを頬張ると隣の座った人がふっと笑った。 なにこの人、失礼な!と隣に視線を移すと、そこにいたのはブラックだった。 びっくりしすぎて「わあ!?」と大きな声を出してクロワッサンを皿の上に落としてしまった(スリザリン生に睨まれた…) ど、どうして彼がここに。休日は滅多に朝食に来ないくせに、しかもこんな朝早くから…!



「どうして、貴方が…!」
「別に朝食のときに俺がいてもおかしくないだろ?」



その反応傷つく、なんてけらけら笑うブラック。朝食にいてもおかしくないって?おかしいわよ、 しかもこんな日曜の朝早くに!休日の朝食でジェームズ達はよく見るけれどブラックは滅多に見ない。 それにごくたまに朝食に来ていてもこんな朝早くからじゃない。



「じゃあ、どうして貴方がわたしの隣に座るの」
「ジェームズたちと仲良いみたいだから。俺も仲良くしておこうかと思っただけ」
「別にいいよ、そんな無理やりみたいな感じだし」



それにわたしは貴方と仲良くする気なんてないもの!なんては言えないけど。 それに仲良くしたら、女の子たちの視線が痛い。かぼちゃスープを飲みながらレイブンクローのほうへ目を向けると、 ブラックの彼女であるシルクと目が合った(ほらやっぱり) 彼女は目が合ったときにぎろりとわたしを睨んでから目を逸らした。ほ、ほら!こういうのが嫌なんだってば!



「じゃあ、せめて1つ空けて座っていただけませんか」
「嫌だといったら?」
「わたしが移動する!」
「じゃあ、俺も移動する」



…なんなの、この人!今まではわたしなんて存在知らなかったみたいな感じだったのに。 たまたま授業で同じ班になったときだってわたし無視してレポート書いちゃうし(本人はきっと覚えてない) わたし本当に何かしたっけ。確かに悪戯はしたけれど…(あれ?)



「も、もしかしてこの前の悪戯をやったのはわたしだってジェームズが喋ったの!?」



き、きっとそうだ!ジェームズは結構意地悪だから。喋らないよ、なんて内緒にするって言ってでも実は 広めちゃうとかそういう人なのだ!リーマスも知ってるけどそんなことする人ではない。 だからきっとジェームズなのだ。ああ、どうしよう。だからブラックはからんでくるんだ。 それで後で呼び出して何か言われるんだきっと!恐る恐るブラックを見ると、彼はきょとん、という顔をしていた。



「この前の悪戯、だったのか?」
「え?」



予想とは違った反応。…え、もしかして違ったの?だったらわたし馬鹿。 だって自分から犯人はわたしだって言っちゃったようなものじゃない。 じゃあ、ジェームズは喋ってなんかいなかったんだ…(ごめんなさい、疑ってしまって) けれど、どうしよう。だってあんなことされたら誰でも怒るでしょう?仕返ししたくなるでしょう? (わたしだったらする。実際したし)



「(とりあえず)今の嘘よ、冗談。気にしないで。ジョークを言ってみたくって」
「嘘じゃないだろ。ふーん、お前だったのか」
「ごめんなさい。ほんの出来心でやったの。だからパンチ一発で許してくれたら嬉しい」
「女相手にするわけないだろ。まあ、スニベルスだったらパンチじゃすまなかったけどな」



ごめん、セブルス…貴方に疑いがいっていたかも。 わたしが言わなかったらきっと貴方ひどい目にあってた。



「けど、お前そういう奴だったんだな」
「どういう意味?」
「外見からして大人しい奴だと思ってた。けど悪戯はやり返すし、結構おもしろい奴だってことがわかった」



それにお前馬鹿!なんて無邪気に笑うブラックはちょっとかっこよかった (きっとこうやって他の女の子は彼に恋をするだろうなあ)ふん、と 目を逸らしてクロワッサンをがぶりとかじるとブラックが「もっと上品に食えよ」なんてぼそりと言った。 ごめんなさいね、そこらへんの女の子たちとは違って!持っていたスプーンを大きな音を立ててテーブルに置くと 彼はやれやれ、とため息をついた。



「まあ、少し違っていいと思うぜ、俺は」



さらりと言ってブラックはわたしの目の前にあるクロワッサンを取ってぱくりと食べた。 ああ、またこの人はさらりと女を口説くようなことを言って。わたしは騙されないよ? (たぶん、きっと。だから胸が高鳴ったのは気のせいよ)(ていうか間接キス…)



「それ褒めてるの?」
「どうだろうな」



やっぱりブラックはむかつく。







07. Two croissants ふたつのクロワッサン





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