覚悟しなさい!
「今日からマネージャーになる、や」
「……」
「、挨拶」
「…よろしくお願いします」
ボソッとうわごとのように挨拶をした。
そしたら一氏くんが「聞こえんのやけどー」とか言ってきたから
大きな声で「よろしく!」って言っておいてやった。
そんなあたしを見て白石くんは「いい加減にせぇや。ほら、座れ」とか言って
背中をポンッと押してきた。
いい加減にしてほしいのは一氏くんなんだけどな。
「まだ初日や。慣れんこともあると思うでみんなサポートしたってな」
みんなは適当な返事をしてから立ち上がってテニスコートに行った。
なんだ、これでミーティングは終わりか。
ってことは、いよいよマネージャーの仕事をしなくちゃいけないときがきた。小さなため息をひとつすると、ボードの前に立っていた白石くんが
さっきまで謙也が座っていた椅子に座った。
「マネージャーの仕事やけど、簡単やですぐ終わるで」
そう一言言ってから小さな紙を渡してきた。
見てみると、マネージャーの仕事の内容が手書きで書かれていた。
この綺麗な字は、白石くんの字だ。
あたしのために書いてくれたのかな。
けど、見た瞬間せっかく手書きで丁寧に書いてくれたみたいだけど、
その紙を破りたくなった。
「何これ…。簡単じゃないよ、むしろキツ…」
・ドリンクを作ってレギュラーに渡す
・休憩が始まってすぐタオルをレギュラーに渡す
・ユニフォームやタオルなどの洗濯・選手の体調管理
・試合、練習の記録
・そうじ
これだけじゃない。もっと書いてある。
これが簡単とか言った白石くんはどうかしてる。
「大丈夫や。みんなもサポートするし」
ほなよろしく〜と他人事のように(いや、他人事だけどさ)言って部室から出て行った。
部室に1人残されたあたしは何をしたらいいんだろう。
もうマネージャーの仕事をしろってことなのかな。
「…ドリンクでも作ろうかな」
とりあえず、メモに書いてあるドリンクを作ることにした。
けど、ドリンクがどこにあるかわからないし、作り方だってわからない。
さっきみんなサポートしてくれるって言ったけど…みんないないよ?ここに。
「あーもう…。誰か教えてよ…」
「一番右の棚の上」
「棚の上?」
棚の上を見てみるとドリンクはあった。
あたしは背伸びをしてドリンクを取る。
ドリンクには名前が刻まれていてらくがきされてるのもあった。…んん?今誰が教えてくれた?
ふっと振り返ってみると、そこには一氏くんが。
「嫌々でマネージャーになっとるんやったらやめろ」
ありがとう、そう言おうとしたら一氏くんがこんなことを言うもんだから。
言いづらくなった。あ、違う。言いたくなくなった。
「小春と俺を邪魔すんなや」そういい残して一氏くんは部室を出て行った。
…あ、なるほど。嫉妬か。小春くんがあたしをマネージャーに入らせたから
嫉妬してるんだ。やっぱあの2人は噂どうりホモだったのね。
「嫌々かぁ……」
一氏くんが出て行ったあとぽつりと言う。
確かに、マネージャーになったってユウや、白石くんに言われたときは
正直嫌とか、めんどくさい、とかそういう気持ちしかなかった。けど、今はちょっと違う。たしかに…ちょっとやだなぁっていう気持ちはあるけれど、
もう入ったものは仕方ないから。頑張ろうって気持ちもある。
「…あー、ムカつく!だったら頑張ってやろうじゃないの!」
ドリンクを置いたままあたしは部室を出た。
そしたらちょうど休憩に入った小春くんの姿が。
勢いよく部室を出たから、小春くんはあたしを見て「どうしたの?」って驚いた顔で聞いてくる。
「小春くん、みんなのドリンクの味の好みって知ってる!?」
小春くんはもちろんよなんて語尾にハートを付けて言った。
「じゃあ、教えてくれる!?」
★★★★
「うお!?今日のめっちゃ薄くておいしいで!」
「わいのめっちゃ甘くなっとるでー!おいしいわぁ!」
あれから小春くんにレギュラーみんなのドリンクの味の好みを教えてもらった。
その情報をもとにあたしは1人1人味が違うドリンクを作る。
そしたら休憩で部室に戻ってきたレギュラー陣がドリンクを飲むなり
おいしい、だとか最高!だとか言ってくれる。
「けど、これって…」
「あたし、もうマネージャーになったからにはきっちり働くから。覚悟しておいてね!」
あたしはみんなに言った。
もちろん、その中に一氏くんもいる。
近いうちに君等を見返してやるんだから。あたしがいなくなったら何もできなくしてやるんだから!
だって、「嫌々でマネージャーになっとるんやったらやめろ」なんて言われたら
誰でもムカつくし、頑張ろうっていう気になるじゃないの。第3話。文章グダグダ(笑)けど直さない。笑 09.12.04
見てなさいよ、一氏ユウジ!!
いつかアンタに「あの時はすんませんでした」って言わせてやるんだから!
「楽しみやなぁ…」
そんな千尋を見て、白石はにこっと笑ってそう呟いた。